ケータイ小説 野いちご

皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―



誰か嘘だと言ってほしい。

赤毛の男――もとい、カルム団長の言い分によると、早朝に叩き起こされた彼は、私が無茶苦茶なことをしないように監視しろとの命令を直々に受けたようだ。

プライドが高そうな彼は、心底納得がいっていない様子で、こちらに向けられるのは壮大な嫌悪だ。


でも、そんなの私だって同じよ。


「――見張りなんていらないわ。それも、あんただなんて絶っ対嫌!」


なぜ監視なんてされなければならないのよ!


「うるせぇ。こっちだってやりたくねぇのに、迷惑しているんだよ! 文句があれば、陛下に言え」


昨夜の因縁もつけたくなる相手が、見張り役だなんて、信じたくもない。つけるにしても、もっと適任者がいるはずだ。

ジリジリと顔を近づけ、バチバチと火花が飛び散る。

怒りのあまり、昨日の恐怖など、睨み合いを続けているうちに、どこかへぶっ飛んでしまった。


両者とも譲らず、嫌悪感を競い合っていると、見かねたサリーが、にこやかに仲裁にはいる。


「とりあえず、状況はわかりました。おふたりとも落ち着いて下さい。」


暴れ馬を収めるように、どぅどぅ、と手のひらを上下させて。私たちの身体をやんわりと引き離す。

それから笑顔を崩さぬまま、まずは、腰に手を当ててくるりと私を振り返る。


「とりあえず、アイリスさま、不服かもしれませんが、ここでは陛下命令は、絶対です。身ごもったお身体を心配して、団長を配置したとのことでしょう」


心配? とは思ったものの、昔ながらの有無を言わせない物言いに、何も言えなくなってしまう。


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