「星矢が頭ごなしに桜のことを否定すると思う?そんなことで嫌いになると思う?」


「思うよ。だって碧からしたら私は……」


……憎い相手。


今でこそその感情は消えてるかもしれないけど、あの件を蒸し返すとなると、思い出してしまうだろう。


もう蓋をして二度と開けたくないんだ。


「だったら、真相を伝えるべきだと思う。何度も言ったけど、桜は何も悪くないんだよ?もう高2だし、真相伝えなよ。時効だって」


「ううん。伝えない。碧の精神を乱したくない。だって、これから予選でしょ?大事な時期なんでしょ?邪魔できないよ」


あの事件に時効なんてない。


いつ真相を告げたって、碧は絶対ショックを受ける。


碧が優しい人だからこそ、ショックを受ける。


「碧を守りたいの。だからあの日退部を受け入れた。陽菜も知ってるでしょ?」


「そうだけど…」


「…あの件の真相は誰にも話さない。絶対に」


あの女…西城瑠璃(さいじょうるり)の魔の手から、碧を守るために私が唯一できること。


それは沈黙を守ること。


ただ、それだけしかないんだ。