築地塀の内側から、梟が三度鳴く。
 ほぉほぉほぉ。

 目の部分を微かに残しただけの、黒装束に身を包んだ小雀と手下の佐助は小さく頷き合う。
 立てかけた板を踏み台に飛び、屋敷の中に入り込んだ。

 庭には眠り薬入りの酒を飲んだ男たちが、気持ちよさそうに眠りこけている。

 ここは冬野中納言邸。
 優弦には釘を刺されたけれど、小雀は何としても許せなかった。

 笹掌侍から聞いた話もそうだし、夜盗に入られた話も酷い。

 やっていないことまでやったと言われた上に、あろうことかあの男は、盗まれたと嘘をついた衣やら調度品を商人に売ろうとしたのである。

 その商人はたまたま紅鬼子の仲間だった。知らぬ顔をして『まさか盗品ではありませんよね?』と確認すると、男は自分は紅鬼子の一味だと言ったという。『義賊なのは知っているだろう? 悪いようにはせん』と。

 商人は捕まるのは嫌なのでと断り、男の後をつけ、冬野中納言の使用人と会っているのを突き止めた。


(お前は絶対に許せない)
 熟睡している冬野中納言を見下ろし、小雀は拳を握り締めた。

 傍らで寝ている女に見覚えがあるような気がしたけれど、いかんせん薄い月明かりではよくわからない。

 ゆっくりする時間はないのだ。瑠璃の壺や伽羅など高価な香料を平包でくるみ、佐助が素早く背負う。

 長居は禁物だ。