「紅鬼子とかいう夜盗らしいわ。赤鬼のごとき恐ろしい顔をしているんですって、家の中はめちゃくちゃで、けが人もいるそうよ、恐ろしい」

 それを聞いた小雀が、心密かに怒りの炎を燃やしていたのは言うまでもない。

(持ち出したのは砂金と唐三彩だけじゃないの! 誰にも暴力は振るっていないわ! 邸はどこもあらしていない!)

 ぷるぷると震える手を袖の中に隠し、許すまじ冬野中納言と心に誓っていた。