まずい。
私、蓮見 詩菜(はすみ しな)
将来が困った事になってしまった。


いつ、いかなる時のためにも
次の働き先は探していたはずなのに。

やりたい事がないからか
それとも条件のハードルを上げすぎたせいか
一向に仕事が見つかる気配もないまま
今の職場を強制終了させられてしまったのだから行く末の不安は絶大。

このままだと無職は確実。

「やばい。それだけは避けないと。
 最悪、なんでもいいから仕事しないと。」

ニートまでのカウントダウン。
どこが良いとか選んでいる暇なんかない。
選択肢の幅が究極に少なくなっているんだから。
履歴書を送りまくらないと間に合わない。



*****


電車通勤の私が帰る時間帯は
ちょうど帰宅ラッシュにぶつかる。
勢いの流れで満員車両に乗り込み
すぐ隣の駅でまた降りる。
そこから家路までは歩いて10分ほど。
トータル合わせても割と近い距離だから
今の職場の良いところだったのに。

その帰り道にスーパーがあるから
いつもそこで夕飯の食材を買って
今日はついでにコンビニにも立ち寄って
求人情報誌も購入してみた。


夏が近いからか
夜7時でも天気が良ければ薄暗い程度のこの時期。

それにも関わらず
私が住む築30年のボロ…じゃなくて年季の入ったアパートは、今日もホラー屋敷にしか見えない。