<池のほとり・14時>

外は穏やかに晴れている。
ミツバチたちが蜜を集めに
飛び交っている。

茂みには、
白い花が一面に咲いていた。

池の水面が、いくつもの輪を
つくり揺れる。

クラリスはいた・・・
踊っていた・・・
猫たちと一緒に・・

そこだけが
魔法の空間になっているようだ。

アンバーは息を呑んだ。
妖精の踊り・・・
クラリスの指先から
美しい音楽が流れてくるようだ。

柳のようにしなやかで、
動く軌跡が見えるよう。

木々がその動きに合わせて
ざわめき、葉を舞い散らせる。

クラリスは、猫たちに笑いかけた。

猫たちは立ち上がり、
クラリスと手をつなぐ。
いや、しっぽを絡ませる。

クラリスと猫たちは、
輪になったり、一列になったり・・・・

その時
一匹の猫がアンバーを見た。

魔法がとけたように、
猫たちは4本足で、すぐに逃げ出した。
クラリスは立ちすくんでいた。

木のそばに立っていた
アンバーが、咳払いをした。

クラリスは
ようやく目がさめたように、
アンバーを見た。

アンバーはクラリスの方へ歩き、
正面に立った。
「クラリス、
君に言っておきたい事がある!」

「なに?」
クラリスの口調は、
そっけないものだった。

あなたには、何の関心もないのよ
というように。

その態度が
アンバーの怒りを誘った。

「もっと、真面目にやれよっ!
君のせいで、交流会が台無しだっ!!」

クラリスは、横を向いて言った。
「・・だって、面白くないもの」

その一言が、
アンバーの怒りに、さらに油を
注ぐ結果となった。

「君も魔女の国の代表だろう?!
ここに来ている人は
みんな、それぞれの国を代表して
来ている。

今は成人でなくても、近いうちには国を統治する立場だ!」

アンバーは
<もっと責任を感じろ>と
言いたかった。

クラリスは、
上気して赤くなっている
アンバーの顔を、正面から見た。

「そんな事・・
わかっているけど・・
真剣にやること?」

クラリスは
アンバーの横をするりと抜けて、
王宮の庭のほうに駆けて行った。

一人取り残されたアンバーは
怒りのやり場がないようで、
肩で息をつき、木の幹を拳で
殴った。

「クラリス・グランビア、
あいつは絶対に許せない!!」

アンバーの熱をもった頬を
風がなでていく。

<楽しくない・・>

あの言葉は、胸に突き刺さった。
それはわかる。

そう、自分だって・・・・