<グスタフ皇国・王宮・皇帝の執務室・15時>


<交流会>とは
7日間かけて行われる、
各国の未成年者代表が
参加する親睦会のことだ。

昔は
お茶会という名目だったが、
いつのまにか各国が
親睦をいう名のもとに、
国力を探り合う機会になっている。

国を統治する次世代が
一堂に会することで、
国同士が水面下で画策する。

次世代統治者の実力、人柄、
リーダーシップ、協調性など
客観的に観たいという、
思惑があるのだろう。

<ゲーム>という名のもとに
いろいろな種目が用意され、
得点形式で、競い合うようになった。

どの国と友好関係を結べばよいのか、
貿易は?物流?軍備?国策は?
そして、
未来の夫、妻を選ぶ機会にもなる。

今年の主催国は、グスタフ皇国であり、
その皇太子であるアンバーが
ホストとしての重責を担う事になっていた。

アンバーは、グスタフ皇国の長子である。

グスタフ特有の黒髪に、赤いメッシュが入る。
瞳は父の色を受け継ぎ、ヘーゼルの茶色。

身長は高いが、まだ少年ぽい
体つきをしている。

あと、1年で成人の儀を迎えるが、それまでには、何とか一人前にはなるだろう。

父である皇帝はそう考えていた。

そして正式に妃を、めとらねばなるまい。

アンバーは、父である皇帝に呼ばれた。
「さて、交流会の件だが・・」

アンバーは皇帝の前にひざまずき、頭を垂れた。

「お前の使い魔を選ぼう」

<使い魔>とは
交流会の参加者のサポート役であり、(あるじ)
護衛や世話・支援にもあたる。

「今年はエルフにしよう」
「えっ?」

アンバーは驚き、抗議の声をあげた。
「父上、エルフでは・・
戦力になりませんが・・!」

皇帝はその声を遮る(さえぎる)ように
「使い魔に頼るのは良くない。
自分の力でやらなくては」

そして、
戸棚から液体が入ったガラス瓶を
取り出した。

ガラス瓶には、
水色と緑がマーブル状になった
輝く石が入っている。

「お前に預けよう。
エルフの第2の心臓だ」