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「新郎様、新婦様のご準備が整いました」

ウェディングプランナーの声が聞こえてきたため、蒼士がゆっくりと振り返るとプランナーの女性達から、うっとりとした瞳を向けられ「ほうっ」という溜息が漏れる。

 今日の蒼士はいつものボサボサの前髪を後ろへとなでつけ、整った顔を周りに見せ、人を引き付けるオーラを放っていた。
 
 蒼士は目の前にある金色のドアノブを引き中へと入っていくと、純白のドレスに身を包んだ愛しい人の姿がそこにあった。一瞬息を吸うのも忘れてしまうほど美しい沙菜に見惚れていると沙菜が恥ずかしそうにこっちを見つめて言った。

「蒼士さん、とっても素敵です」

 俺が言おうとしていた言葉……先を越されてしまった。

 ふっと蒼士が笑うと沙菜の耳元で囁いた。

「それは俺のセリフだ。沙菜……綺麗だよ」

 最近知った……沙菜は耳が弱い。

 優しく囁けば……ほら……。

 プルプルと震えだし、顔を赤くする。

 そのまま耳に「チュッ」とリップ音を残せば更に顔を赤くする。


 かわいい沙菜。


「もう、蒼士さん怒りますよ」

「可愛すぎる沙菜が悪い」


 そこへ「新郎様、新婦様お時間です」とプランナーさんがラブラブの所を申し訳ありませんと言いそうな顔で声をかけてくる。心なしか顔が赤くなったいるような気が……。

 今日の蒼士さんは素敵すぎるから仕方がないか……。




「「はい」」


 二人の声が重なった。




 *


 青い空に色とりどり花びらが舞っていた。

「おめでとうございます」

「おめでとう」

 沢山の人々に祝福され幸せそうに笑う二人は一枚の絵画の様で、周りにいた人々をも幸せにしていた。

「沙菜……愛してる。俺はお前を一生守りぬくよ」

「蒼士さん……ありがとうございます。これからは私と、もう一人守ってもらいたい人がいるんです」

 そう言って沙菜がおなかに手を当てた。その仕草で蒼士は全てを悟り喜びから沙菜を抱き上げた。

「守る俺がお前たちを守り抜く」

「よろしくお願いいたします」

 幸せそうに笑う二人を皆が羨ましそうに見つめていた。




       Fin