蒼士が会議から戻るとオフィス内が騒然としていた。そこには楽しそうに働く沙菜の姿があった。

「蒼士さん……ごめんなさい。いろいろ手を出してしまいました。私でできることはさせていただいて、わからないものは蒼士さんのデスクにメモしておきましたので後で目を通してください。それでは私はこれで帰ります」

 蒼士が自分のデスクに目を向けると沢山のメモが貼ってあった。

 いそいそと帰ろうとする沙菜に蒼士は労いの言葉をかける。

「ありがとう。助かった、お疲れ様」

 ついでに蒼士がポンポンっと頭を叩くと「えへへ」と頬を紅潮させた沙菜が笑顔で答えた。

「はい!!お疲れ様でした。蒼士さん、お家で待ってますね」


「ふぐっ……ああ」

 家で待っている……そう言った沙菜の笑顔に蒼士の口から変な声が漏れたがそれを咳払いでごます。


 そんな蒼士の顔は真っ赤で、右手で口を押え必死に何かに耐えている。しかしそんな蒼士の状態に気づくことなく沙菜はスキップするように嬉しそうに帰って行った。




 それを見ていた社員達の声が蒼士の耳に届いてくる。

「何あの二人……うわーー。くるわーー」

「キャー!!初々しー」

「私まで、ぐっとくるものがあったよー」

 出向から来たばかりの堅物部長の有り得ない姿に驚きつつも、親近感がわいた社員達だった。