今もあいつには言いたいことが沢山ある……あいつがいなければ次から次へと言いたいことが頭に浮かんでくるのに、あいつが目の前にいると頭が真っ白になってしまう。

 それでもこの変身した姿を見れば少しは一泡吹かせてやれるのでは?と淡い期待をしてしまう。それに蒼士さんが後で慰めてくれるなら頑張れるかも……なーんて「ふふふ」と笑みをこぼしながらエレベーターのボタンを押す。四階の営業部につくとほとんどの人が営業に出ているため閑散としていたが、一番奥のデスクに営業部長を発見し領収書を渡した。一応領収書の提出するときの方法を書いたコピー用紙も一緒に渡しておいた。営業部長は部下の不手際に頭を下げてくれたため、沙菜も申し訳ないと頭を下げた。こんな時、悪くも無いのに頭を下げてしまうのは日本人だからだろう。

 とりあえず要件が済んだ沙菜は営業部へ戻るためエレベーターを待っていると、下から上がってきたエレベーターのドアが開いた。

 そこには立っていたのは……。

 樹……。

 うそ、どうしてこんな時間に帰ってくるの。

 突然の事に沙菜は何か言ってやりたいのにやはり言葉が浮かんでこない。沙菜は後ろへと足を一歩引くとエレベーターには乗らずに階段へと向かって歩き出していた。