出願っていうことは進学ってことだ。
それは専門学校?大学?
気にはなったけど、わざわざ聞くことでもない。
「なら、いいんですけど」と、静かに一言返しておいた。
「それに、俺もすき焼き楽しみにしてるって言ったでしょ」
先輩は前回より慣れた様子でソファーに座った。
逆にそんなものに慣れなくなっている者は、ここにいるわたし。
夏休みはいじめられっ子からすれば天国のようなもの。
学校に行かなくていい、それだけでいつもより数十倍も気楽。
「そうそう!体育祭!高槻くんはどうだったの?」
「俺はリレーで1位獲りました」
「まぁ!すごい!この子ってば何の種目出たのかすら何ひとつ教えてくれないのよ~」
ぐつぐつぐつ。
真夏のすき焼きっていうのも中々季節感がおかしい気がするけど。
エアコンを少し低めに設定すれば、感覚は慣れてくるもので。
「涼夏もリレーでしたよ。女子選抜のアンカーで」
「あらそうなの!?そんな大役っ!大丈夫だったかしらこの子…」