部長……笑ってる?

 笑ってる部長って初めてかも……。

 キョトンと見つめる沙菜から視線を逸らした蒼士は優しく話しかけた。

「少しは落ち着いたみたいだな……。どうだ、話せそうか?」

 沙菜と蒼士は休憩用のソファーに腰を下すと、話しても良いものなのかと、言い淀む沙菜。

 しかし……。

 部長の前であれだけ泣いて、何でもありませんは……無いわよね。
 
 紗菜はゆっくりと、今しがたあった出来事を話し出した。

「…………」

 蒼士は黙ったまま話を聞き、沙菜が話終えるとボソッと呟いた。

「そうか……」

 俯いている沙菜に蒼士が問うてくる。

「土屋、お前はどうしたい?これからどうする?」

 私は……。

 変わりたい。

 こんな惨めな自分……もう嫌だ。


「部長……私……変わりたいです」


 沙菜はソファーから立ち上がると蒼士の前に立ち拳を握りしめた。

「部長……お願いがあります。三日間有休を下さい。今日は火曜日ですよね。水木金と休めば元々、土日は休みだったので五日間休むことができます。月曜日には元気に仕事に行きますので……」

「わかった。三日でいいんだな……変なことは考えていないよな?」

 変なこと?

 キョトンと沙菜が首をかしげると、蒼士は沙菜の頭をガシガシと撫でた。

「心配なさそうだな」

 そう言った部長の声がとても優しくて、沙菜の心臓が少しだけドキンっと跳ねたのだった。