(こんなところも、全部大好きだな)

 この人の全てが愛おしいと思った。
 ミレイナはジェラールと向かい合い、舞踏会会場の中央に立つ。
 度重なる練習の成果で曲が始まると自然に体が動き出し、ミレイナは笑みをこぼす。

「ジェラール陛下。私、ここで陛下と踊るのが夢だったんです」
「そうか」
「でも、もっと大きな夢が叶いそうです」

 そう告げたミレイナを、ジェラールは不思議そうに見つめる。

「もっと大きな夢?」
「大好きな人と恋をして、結婚して、幸せに暮らしてみたかったんです」

 それは二十五歳で他界した前世で叶えられなかった、ミレイナの夢だ。

「その夢は叶うと俺が保証する」

 ジェラールは優しく目を細める。

「ミレイナが望むなら、何だって叶えてやる」
「では、一生お側にいてくださいね」
「もちろんだ」

 くるりとターンするのに合わせ、周囲が煌めく。
 ミレイナは最愛の人を見上げ、満面に笑みを浮かべた。

〈了〉