呼びかけられてミレイナはパッと後ろを振り返る。
 目が合ったその人──ジェラールは、ミレイナを見つめたまま大きく目を見開いていた。

「陛下?」

 様子がおかしいことに気付いたミレイナはジェラールに声をかける。ジェラールはハッとしたような顔をした。

(どうしたのかしら?)

 ジェラールはまっすぐにこちらに歩み寄ると、ミレイナの片手を取る。

「想像より遥かに綺麗で、驚いた」
「……ありがとうございます」

 蕩けるような眼差しを送るジェラールの褒め言葉に、ミレイナは頬を赤らめる。

「こんなに美しく着飾ったミレイナは誰にも見せずに俺が独占したいほどだ。だが、そうもいかないな」

 苦々しげに呟くその口調は、本気でそう思っていそうに見えた。ミレイナはふふっと笑う。

「では、終わった後は独占していいですよ」

 ミレイナはこそっと呟く。

「言ったな? その言葉、忘れるなよ」

 ジェラールはにやりと笑うと、ミレイナに軽くキスをした。