「あ、アイリスさま!」


サリーが私の体を支えながら、ベットへ誘導する。


ルイナードは、父や私を嫌悪していたんじゃないの?


「⋯⋯ごめんなさい。ちょっと驚いて」

「大切なお身体です。どうかご無理はなさらず」


彼女は、懐妊のことも知らされているのだろう。けどそうではない。背中をさする腕へ触れて、首を振る。


「身体は大丈夫⋯⋯でもサリー、それは本当なの? ルイナードが? 私には信じられなくて」


『俺が殺した――』


あの冷酷な瞳で、あんなことを言っていた人が?


「アイリスさま」


言いたいことを察したサリーは、私の前に膝をつく。

それから、私の顔を覗き込むようにして。


「おふたりのお話は、色々と伺っております。しかし――」


一度言いよどみ、少しだけ沈黙を挟んだあと


「いえ、いけませんね。⋯⋯現在私からの陛下の印象をお伝えしたところで、それはアイリスさまの胸に響くとは思えません」


そう言って、なぜだかひとりで納得したかのように、肩丈のダークブラウン髪を揺らして笑顔を見せた。

それは、どういうこと⋯⋯?


「ここでともに過ごせば、きっといつか、アイリス様の中のすべての疑問が解決するときがくるでしょう。今、伝えるべきことではありませんね」


サリーの中で解決してしまったらしい。

あの頃と変わらず、心温まる優しい笑みを浮かべるサリー。よくわからないが、彼女の言うことに今まで間違いはなかった。