「……ねぇ、紫恩いる?」

昼休みになり、僕は紫恩のクラスメイトに紫恩がいるかどうか問いかける。紫恩のクラスメイトは「紫恩なら、すぐ教室を出ていったよ」と答えてくれた。

「というか……お前、紫恩と友達なの?……俺は、嫌いなんだよね。紫恩のこと……」

何かが落ちる音がして、僕は音がした方を見る。そこには紫恩が立ってて、紫恩は僕を見つめていた。

「……紫恩……」

僕が声をかけると、紫恩は一瞬だけ何かに怯えるような表情を見せた後、僕に背を向けて走り出す。

「紫恩!」

紫恩の後を追おうとした時、廊下に1冊の本が落ちているのに気が付いて、僕は本を拾った。

これって、紫恩が良く読んでる本だ……。

本を小脇に抱えて、僕は走り出す。紫恩を見つけた場所は、学校の屋上だった。

紫恩は、柵に手をかけて町を眺めている。風が吹いて、僕と紫恩の髪が揺れた。

「……紫恩……」

僕は、紫恩に近づくと声をかける。紫恩は、ゆっくりと僕の方を向いた。紫恩は、寂しそうな顔で僕を見つめる。

「……君も、僕のことを嫌ってんだろ……」

弱々しい声で、そう言う紫恩の瞳が揺れた。

「……良いんだ。僕を嫌っても……僕は、孤独で良い……」