「――で、新しい新人がアレ(・・)か」






汐里が顔をひきつらせて見た先には顔を青ざめ、腰を抜かした青年がいる。
一颯も同じ方向を見ているが、その目は同情だ。
うん、分かるよ。俺もそうだったから。
内心そんなことを思いつつ、目線を最初に見ていた方へ戻す。




そこには凄惨な殺人現場が広がっていた。
被害者は腹を何度も刺され、着ている服は真っ赤に染まっている。
身体にはラテン語で色欲を意味する《luxuria》の文字が刻まれていた。
捜査一課に異動してきてすぐにこんな凄惨な殺人現場に出くわすとは気の毒な新人だ。






「アイツ、異動してきた頃の浅川にそっくりなヘタレだな」






「いや、初めての現場がこれだけ凄惨な現場だったらさすがに腰抜かしますって」






「私の時はもっと凄かったぞ。何せ、死後一ヶ月が経過して腐――」






「張り合わなくていいです!それより、この事件ですけど、二年前の事件に……」






何故かマウントを取ろうとする汐里を一颯は宥め、話を目の前の事件に戻す。
この事件は二年前の事件に大きく関係している可能性が高い。
二年前の事件、ペルソナこと神室志童(かむろ しどう)が教唆して起きた事件のことを指している。
その事件も一つではなく、幾つも起きているためまとめて《ペルソナ事件》等と呼ばれつつある。





「関係しているかもな。調べてみないと分からんが」






汐里は肩を竦めると、少し離れた所で腰を抜かす新人へと近付く。
何を仕出かすか分からないため、一颯もその後を追いかける。
相手は新人であり、署長の息子だという。
親のコネで捜査一課に来たのか、それとも実力で来たのか……。
見たところ、前者の可能性が高い。






瀬戸司(せと つかさ)と言ったか?」






新人の名前は瀬戸司という。
初めての挨拶の時に教育係を命じられた一颯に高圧的な態度を取り、汐里に一喝されていた。
そのせいか、瀬戸は汐里に声をかけられ、びくりと肩を揺らす。






「署長の息子だか知らんが、現場では一人の刑事として扱う。浅川、そいつを連れてこい」






一颯は瀬戸を立たせると、背中を押して殺人現場へと連れていく。
結果、瀬戸は凄惨さに昏倒した。
「気絶……ふざけるなよ……」と汐里の怒りの声が聞こえるが、一颯は昏倒する瀬戸に同情した。






瀬戸司。
彼の加入により、一颯と汐里の関係性は今後大きく変化していく。
そして、始まりを見せた神室志童と《七つの大罪》の行いは今後世の中を震撼させ、恐怖へ陥れることになる。