「さあどうぞ! 召し上がれ!」
 休憩時間にお茶と一緒に出したのは、ガトーショコラ。
 丸型で焼いたガトーショコラを八等分に切り分け、お皿に載せたら上から粉糖をさらさらと振りかけます。上からホイップをトロリとかけたら、その横にミントの葉のようなハーブを添えました。我ながら、まあまあちゃんとしたデザートプレートになったと思います。
「わぁぁぁ! 素敵!」
「お店みたいよ!」
「うん、美味しいわ」
 手の込んだおやつに、メイドさんたち大絶賛です。
「毎日バレンタインデーでもいいわね」
 えっと、それはちょっと特別感なくなるので遠慮します。

「ばれんたいんでー? ふうん」
「いつもお世話になってるフォーンさんにも『義理チョコ』どうぞ!」
 いつもよりちょっと豪華なおやつにけげんな顔をした執事のフォーンさんにも、ざっくりバレンタインの説明をしてあげました。『日頃お世話になっている人にチョコレートを渡す日』と。
 顔合わす度にお小言しか言わないフォーンさんには、『友チョコ』じゃなくて『義理チョコ』ね。大丈夫、意味わかってないだろうから。