「お互い迷惑な話だが、都合が良い面もある。子兎の存在がこの城の滞在理由に使えるなら、あえて噂に乗る価値はあるだろう」

「ええと、話が掴めなくて……つまりどういう?」

「俺の女になれ」


 爆弾発言に脳の働きが停止する。

 監視付きの容疑者の次は、冷酷陛下の女?そんなの困る。私は、ヒトの男をたぶらかした悪女だと決めつけられて国を追い出されたのだ。

 もう、恋だの愛だのに振り回されたくはない。

 すると、険しい顔をしていたのを見抜かれて、畳み掛けられた。


「もちろん、婚約者のフリだ。拒否権はないが、脱兎の如く逃げ出したところで行くあてはあるのか?」

「うっ、それは」

「ドミニコラが城に戻るまでで良い。報酬として植物園を与える。城の書庫も薬室も好きに使え」


 植物園!薬室!

 この数日の間に、どんな口説き文句が私を懐柔できるのか完全に把握済みらしい。興味を惹かれたのがバレバレだ。

 一国の王の婚約者はとても重要なのに、こんなにも簡単に嘘をついて良いのか戸惑う。

 でも、本人が言っているのなら心配いらないか。ドミニコラさんが帰って来た後は、ベルナルド様がうまく誤魔化してくれるはずよね。