イリアの邪魔はしないと決めている以上、手出しはするつもりはない。

ただ無性に愛くるしい反応を見せる彼女に動揺してはならないと、流してはみるもののここ最近のイリアの仕草が胸に刺さって離れない。

潤んだ瞳で見つめてきたり可愛らしい笑顔を見せてきたり、力を貸してほしいと頼んできたり……その都度堪えるのが精一杯になってきている。

この前ナルから聞いた、婚約者を見つけるために頑張っているという情報は石で頭を殴られたような衝撃を受けたのはどうしてなのか、ヒューリは分からなかった。

ただ彼女が自分達のために精一杯になって動いていて、それを心から楽しんでいることを知っている。

自分が彼女の興味を引くような存在でしかないこともよく理解しているつもりだった。

それでも彼女が楽しそうに笑っていられるのなら、それでいいと願わずにはいられない。

「イリア」

彼女の名前を呼んで雲に覆われたような心を晴らしたかった。

他の誰かの元へと嫁ぐ彼女の姿を想像しただけで、胸糞悪い感情ばかりが広がってしまう。

彼女の笑顔が見られればそれでいい、自分達は住む世界が異なるのだからと、自分に言って聞かせ幸せそうな顔して眠る彼女の寝顔を独り占めするのだった。