浮かれてばかりいたらここでの生活も、向こうでの研究もどっちつかずになりかねない。そうならないためにもどこかできちんと区切りを付けて、どちらともしっかりと計画を立てながら生活していくことを目標として掲げることに決めた。

夜な夜な活動しているため朝早く起きることは不可能だが、エリー達に迷惑はかけないように行動することは可能だ。

朝食を済ませたイリアはエリーの元へと向かい、深呼吸をしてから扉を軽やかにノックした。

「入って大丈夫よ」

「失礼します、伯母様」

扉を開け部屋の中に入ると突然のイリアの訪室に若干驚きの顔を見せたが、エリーは何一つとして動じることなく侍女達に指示を出す。

「後でこの資料を主人に届けてちょうだい。あと、今後のスケジュール管理を確認したいからステラを呼んでおいて」

「かしこまりました、奥様」

「どうしたの?イリア。あなたが私に用があるなんて珍しいわね」

颯爽と動くエリーの姿は領主のサポート役として非常に人気が高いのも頷ける。貴族夫人は大体領主である旦那の仕事は手伝うことなく、暇を持て余すあまり遊び呆ける夫人もいる。

そんなはしたない人間と一緒にして欲しくないと言わんばかりのキビキビとした動きは、この屋敷に住まう者からの評判はかなりいい。

仕事だけでなく貴族夫人としての立ち振る舞いや、頭の回転の速さ、そして溢れんばかりの美貌、全てを揃えた出来る女の象徴として称えられるエリーを見て、イリアは覚悟を決めた。