そして瞬きを忘れて、視界に飛び込んできた光景にすべてを奪われたかのように目を見開いた。

地の底だというのに、太陽のように優しい光がそこら中に乱反射してその輝きを放つ大きなクリスタル達。そのクリスタルから湧いて出てくる濁りを知らない透き通った水が小川を作り流れていく。その小川の水を吸って育つ草花がびっしりと地面の底に生えていたのだ。

「あれは……地上に生えているのと一緒だ……」

イリアの生活する街にも、街の外にもごく当たり前に育つ草花がこんな場所で見れる事に驚いていたイリアは、ふと全体を眺めるために視界を前に向けた。

「っ……!」

そこに広がっていたのは、どこまで続く開放感溢れる洞窟内に地上と変わらない植物達が根を下ろし自然豊かな空間があった。いつの間にか縦穴から反れるように続く横道へとドラゴンは進んでいたのだ。

上を見上げれば、同じように翼を広げるドラゴン達の群れが見て取れる。非現実的なこの光景を、イリアは口を開けて眺めることしか出来なかった。

ドラゴンが速度を落とし河原に着地すると、イリアは嗅いだことのある土の香りに地面に顔を近づけた。

ーー生きてる、私、生きてる。

ふわりと優しく舞う風がイリアの髪を撫でて行き、その風を追いかけるように顔を上げると、ドラゴンと目があった。

「あなたはここに住んでるの?」

「キュー」

「まだ信じられない……あの森の地下にこんな場所が眠っていたなんて」

見渡す限りの豊かな自然がここには生育して、地上と何ら変わらない自然形態を作り上げている。ネグルヴァルトという森に守られてこの場所は生きていたのだ。