こんな場所、早く抜け出してしまいたい――。

 愛想笑いとため息の往復で、そろそろ顔の筋肉も引きつりそうだ。


 矢島さんが桜と結婚した日からは、まだ1週間しか経っていない。それなのに、すごく時が経ったように感じる。

 退屈な時間の中、ふとあの日のことを思い出していた。

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「晴日、話がある。」

 結婚式に披露宴。華やかな式が終わって早々、迎えの車を待たせる父が、帰ろうとする私を引き止めた。


 今は帰りたい。矢島さんを引き離し、私たちを兄妹にした。そんな父と、今は一緒にいたくない。

 そう思っていても、逆らうことができない。無言の圧を感じながら、渋々同じ車に乗り込んだ。


「見なさい。」

 車が走り出して早々、高級感のある手触りのいい台紙を渡された。恐る恐る中を開いてみると、そこにはかしこまった表情の男性が映っていた。

「来週の日曜、12時。雅亭(みやびてい)。」

 唖然としている私に、業務連絡のように告げてきた父。その言葉とこの写真。すぐにピンときた。


「私に.....お見合いをしろ、ということですか。」

「彼は、神谷(かみや)製薬の一人息子だ。将来、会社を継ぐことになるだろう。良い縁談だ。」

 驚きのあまり、言葉も出なかった。

 私には分からない。あれだけ矢島さんとの結婚をまとめようとしていた父が、こうも突然変わってしまうなんて。信じられなかった。