そんなイリアを見かねてナリダムは食事の席に着くように促して来て、渋々食事にありついた。こうしてまた気を使わせてしまうのも、イリアに取っては心苦しかったのだ。

「それで、今日は御相手と何を話したんだい?」

「鉄鉱資源が採れるということを知っていたので、産業発展のためにどのように資源を使うのかについてでした」

「またまた小難しい話を選んだね」

苦笑混じりにイリアを見つめるナリダムだが、イリアはその視線を合わせることはできなかった。怒られるわけではないのに、小さくなる子供のようにイリアは唇を固く閉ざした。

「本当に、君は兄さんに似ているよ。研究熱心で、何事にも真っ直ぐで。見ているこっちまでワクワクしてしまうようなそんな錯覚すらも作ってしまう」

ナリダムは穏やかな声で、何かを懐かしみながら窓の外に浮かぶ月を再び眺めた。そして思い出の蓋を開けるように、ゆっくりとその言葉を口にした。

「こんな月がぽっかり浮かぶ夜空を見るとね、ふと思い出してしまうんだ。兄がドラゴンがこの世のどこかに存在すると熱く興奮しながら語ってくれた日をね。ありもしない架空の生き物を、兄が語るとまるで実際に見て触れてきたかのようで、僕もいると思い込まされた時もあったくらいだ」

ドラゴン、その言葉にイリアは閉ざしていた口を開けて、飛び出しそうになる言葉を飲み込んで、一つ息を吐き出した。

「伯父様は、その、ドラゴンは本当にいると今も思いますか……?」

「僕には世界の理というものはわからないから、何とも言えないな」

「そうですか……」

その後は何の会話もなくただ食事が終わった時に、次は湯気が冷めるまで頑張ってくれとナリダムに声を掛けられ、イリアは自室へと戻った。