「ほら、春哉が勝手に勘違いしただけじゃん！」
「戸崎さんはとりあえず落ち着こうか？」
「あっ、珍しく春哉がご機嫌ナナメだ」
「えっ……！？」
沙良先輩の言葉に、思わず過剰な反応をしてしまう。
しまったと思ったときにはもう、火神くんが不思議そうに私を見ていた。
だって、春哉くんがご機嫌ナナメだなんて……正直いつもと変わらない気がしたけれど、沙良先輩には不機嫌であるとわかるのかもしれない。
「宮下、どうかしたのか」
「う、ううん……！なんでもないよ！」
慌てて笑顔を浮かべるけれど、これもまた不自然だったのだろう、火神くんの眉間にシワが寄っていた。
「本当に気のせいかと……！あ、あの、私はこれで失礼します！」
このまま変に誤魔化すのも逆効果だと思った私は、逃げる選択をとる。
最後まで知らないフリを貫き通したけれど、このままでバレずに終われるのか不安でたまらなかった。
