平岡くんのニセ彼女になってから二週間が過ぎた頃。

 由香の忠告は現実のものとなった。









 昼休み、学食から戻ってくると机の中に見覚えのない白い紙が一枚入れられていた。きっちりと半分に折り畳まれたそれには「放課後、体育館裏」という短いメッセージ。丸っこい可愛らしい文字にも関わらず、敵意と悪意が溢れ出る力強い文字はおそらく女の子のものだろう。

 うわぁ、マジかよめんどくさい。

 この手紙の用件は簡単に予想がつくけれど、差出人までは特定出来ない。なんせ心当たりが多すぎる。

 由香に言ったってどうせネタに使われるだけだから、今回の事は言わないでおこうと思う。私はこないだ学んだのだ。もう誰も信じない。

 それにこういう事は大事(おおごと)にせず、当人同士でさっさと済ませてしまった方が後々楽なのだ。無視なんてしたら行為はますますエスカレートするし、今度は手段を選ばず攻撃してくるだろう。そうなっては更に面倒だ。

 はぁ、と溜息をついて、私はその白い紙を鞄にしまった。