【速報】平岡くんの彼女発覚。相手はなんと二年A組成瀬栞里!!

「これ見た奴が拡散、その拡散を見た奴が拡散、更にそれを見た奴が拡散って具合に他のクラスの子にも広まっていったみたい」

 私は今回SNS、ソーシャルネットワーキングサービスの恐ろしさというものを身をもって知ってしまった。ほらね、薄っぺらい友達付き合いなんかしてるからこんなことになるんだ。ネット社会マジ怖い。

 それにしてもこの書き方は随分と悪意のある書き方である。「なんと」とはなんだ失礼な。おまけに平岡くんはくん付けなのに私はフルネームの呼び捨てだ。この差はなんなんだ一体。

「まぁそういう訳だからさ。悪いけど成瀬さんも覚悟決めてくれない?」

 どういう訳だ、何の覚悟だ、私には一切関係ない!

 声を大にして訴えたくてももう無駄だ。既にここまで広まってしまったのだ、誤解を解くのは難しいに決まっている。起きてしまった事はそう簡単に無かった事には出来ない。わかっている。全ては後の祭なのだ。

「諦めて俺の彼女になってよ」

 ね? 平岡くんに小首を傾げてお願いされる。……こいつ全部わかっててやってるな。あざとい奴め。

 私は身体の中に溜まった黒いモヤモヤを吐き出すように、深く深く息を吐いた。そして身体全体を浄化させるように、新鮮な空気を目一杯取り込む。

「……わかった」
「本当? やったね! ありがとう」

 平岡くんが嬉しそうに笑って言った。こうなっては仕方ない……乗り掛かった船だ。沈むまで乗っかってやろうじゃないの。私は切腹間際の武士の如く、潔く腹を括った。

「これからよろしくね、成瀬さん」

 爽やかな笑顔の平岡くんが腹立たしくて仕方なくて、私は思わず頭を抱える。

 ……ああもう、面倒くさい事になった。