浅海さんが俺のことを『特別』だと言ってくれるのは、

初めて話した相手が俺だから。

彼女の俺に対しての気持ちは、俺が今、浅海さんに対して思ってる気持ちとはきっと全然違うもの。

そんなことわかっている。

浅海さんが抱いている俺へのイメージを裏切りたくないって気持ちと、

もっと触れたいって気持ちが攻めが合ってぐちゃぐちゃになる。

心地いい海の波音。
浅海さんとふたり、ずっとこうしていたい。

特に要件はないのに、無性に何度も名前を呼びたくなる。

「ねぇ、浅海さ──」

「わー!朝の海綺麗〜〜!!」

……最悪だ。

俺の声は、後ろから聞こえた賑やかな声に見事にかき消されて。

浅海さんが後ろを振り返った。

やつらが起きてきた。