「ホント昴っていつになったら私ら待たせず出てこれるわけ?」

「だからごめんって」

「あんたのせいで遅刻になったら責任取ってくれるんでしょうね?」

「だー!もう羽芽、朝から怒りすぎ!寧衣からもなんか言ってよ。昴くんは十分反省してるって」

彼ら3人が入ってきて、教室の空気がガラリと変わる。

賑やかで華やかで。

クラスのみんなに「おはよー」と声をかけてかけられて、まさに寧衣くんの周りにいるお友達はみんな、物語の主人公って感じだ。

それに比べて私は……。

そんなネガティブなことを考え出して落ち込んで、寧衣くんたちに向けていた視線を落として自分の机に向けた瞬間だった。

「あーさーうーみーちゃーん!!」

甲高い声に名前を呼ばれたかと思うと、正面にフッと影ができた。

驚いて顔を上げれば、大きな赤茶色の瞳がこちらを見つめているのが長い前髪の隙間から見えた。