祐希が、ゆっくりと倒れる。


私を庇(かば)ってくれたんだ。


天井に張り付いていた死り神は、私を殺そうと降りてきた。


それを自分が犠牲になって、守ってくれた__。


「ゆ、祐くん!」


駆け出そうとしたが、私の前に死り神が立ちはだかる。


そしてゆっくりと近寄ってくる、手を伸ばして。


私を殺すのに、鎌なんか必要ないのだろう。


人間離れした力で、私の首をへし折るつもりなんだ。


でもその前に、祐希を助けないと!


「…げ、ろ」


「えっ?」


「逃げろ!」


祐希が叫んだ。


「祐くん!」


「早く、逃げろ!」


死り神の足にしがみつき、まだ私のことを守ろうとしている。


肩に鎌が刺さったままなのに。


「で、でも!」


「いいから行け!」


足元にしがみつく祐希の肩から、死り神が鎌を引き抜く。


「あああぁ!」


そしてその傷口を、足でぐりぐりと踏みつける。


「やめて!」


「俺はいいから!早く行けぇええええ!」


死り神を羽交い締めにする祐希の声が、体育館に響き渡った。


それに追い立てられるように、私は駆け出す。


振り返らずに駆け出した。