はた、と動きを止めた私はパソコンをシャットダウンし、両手で頭を抱えた。



───琥珀、あんたはまだ若いんだから、そんな慎重にならなくていいんだよ───



しばらくして、どこからともなく聞こえたのは夢の声。



「……ったく、夢のせいで悩んでるってのに」



彼女の言葉を思い出し、吹っ切れて笑った。

確かに真面目すぎるとはよく言われていた。

そんなに自分に、必死にならなくてもいいと言ってくれたのは夢だった。



「まあ、気楽に行きますか」



……最初で最後にしよう。

数年後に、あれは若気の至りだったと笑い飛ばせるように。

くれぐれも、狼に囚われないよう、十分に注意して。





覚悟を決めたその晩、濃いめのメイクと黒いカラコンだけをして、こっそりと自宅を抜け出し闇夜に消えた。

行き先は荒瀬絆が入り浸るバー『ondine(オンディーヌ)』へ。