「もうウンザリなんだよ!」


本当にウンザリしたような声で、良一が叫んだ。


「それ、本気?」


「あぁ、本気だ」


「それで古城怜華と付き合うわけ?」


「そんなこともう関係ないだろ」


冷たく吐き捨てた良一は、もう愛海のほうを見てしなかった。


決定的にできた、2人の溝(みぞ)。


「そうだね、もう関係ないよね」


あえて明るい声で吹っ切れたように言う愛海は、下唇を噛んでいる。


「愛海、今はしりとりしないと。早く【け】から始まるもの──」


「ねぇ、祐希くん」


心配する私をシカトし、愛海は祐希に声を掛ける。


ん?という表情をする祐希。


「タバコ、一本くれない?」


「タバコ?そんなもん吸ってる場合じゃないだろ?」


私もそう思うけど、愛海はどこか余裕だ。


もしかして、もう【け】からつくものを思いついてるのかもしれない。


「お願い。このザワついた心を落ち着けたいの」


そう頼み込む愛海に、祐希がタバコを一本分けてやった。


口にくわえた先に、ライターで火をつける。


慣れた感じでタバコを吸い込み、そして吐き出した。


最後まで目一杯に吐くと、もったいぶって言ったんだ。


「け・む・り」


『クリアです!』