「どうしたの?」
剣道部の朝練から戻ってきた圭子が、眉を寄せて尋ねてきたので、痴話喧嘩の顛末を説明する。
「くだらない。そんなことより準備しないと」
「準備?」
「しりとりのよ。打ち合わせしたほうがいいし」
「えっ、でも最初の文字が分からなくない?いきなりその場で言われるんだからさ」
「それでも教室になにがあるか、学校内にどんなモノがあるか、見ておくだけで違うと思う」
圭子の説得力ある言葉に「俺もそう思う」と、いつの間にかそばにいた祐希が賛同する。
「どんな文字がきてもいいように、ストックを作っておくべきだ」
「そうだね」
まだチャイムまでは時間がある。
「愛海、調べに行こう!しりとりがスムーズに進むように」
私はそう言って愛海を誘ったが、あっさりと断られてしまった。
相当、機嫌が悪い。
「もうほっときなよ」
圭子はさっさと教室を出て行ってしまう。
「愛海」ともう一度、声を掛けたけど完全に拗(す)ねてしまったようだ。
「行くぞ」
祐希に促され、私も教室を出た。
すると驚いたことに、良一までついてくるではないか。
「愛海のそばに居てあげなよ」と勧めたけど、良一は黙って首を振っただけだった。