「ちょっと聞いてよ!」


教室に入ってくるなり、愛海が飛びついてきた。


すぐその後から「だから違うんだって!」と良一がやってくる。


「朝からどうしたの?」


「ひどいんだって!良一のやつ、浮気したの!」


愛海は目に涙をためて、唇を噛み締める。


村井先生が死んだ時だって、涙ひとつ見せなかったのに。


「誤解なんだって!」


必死で取り繕うとしている良一は、困った顔で頭をかいていた。


「誤解じゃない!じゃ、あのLINEはなによ!それもよりによって、古城怜華となんて…」


「えっ、古城さんと?」


そりゃ、愛海が怒るのも無理はない。


2人は正反対のタイプで、なにかと嫌いあっている。


それでもお嬢様の怜華のほうが、位でいうと上だった。


それを愛海はいつも忌々しく感じていたからだ。


「ちょっとLINEしただけだろ?」


「デートの約束がしてあった!」


「それは…」


参った顔をしているから、どうやら本当なんだろう。


「愛海、スマホ見たの?」


「彼氏のスマホ見てなにが悪いの!?」


完全に開き直った愛海が、きっ!と私を睨みつける。


なんにしろ、これは2人で解決してもらわないと。