泣きたくなるくらいの優しさ。
だけどゆるゆると頬がゆるむような。


きみのようになりたい。



あたりまえのように誰かのために心をくだけるひと。
誰かに笑顔を返すことができるひと。
あたたかい太陽のようなひと。



国語、数学、英語と試験を終えて、理科と社会の二教科を残した昼休み。


彼がくれたハチミツキャンディを口に含む。
柔らかい甘さが舌をやさしく撫でていく。



頑張ろう。
彼はきっと合格するだろうから、私も合格して、同じ高校に通いたい。


近づけなくてもいい、憧れていたい。
ずっと見ていたい。




────そして、入学式の日、きみの背中を遠くに見つけた。

あの日からずっと、私の視線の先には篠宮くんがいる。