……まったく、こちらの気も知らずに暢気なものだ。とはいえ、この調子ならさほど心配せずとも大丈夫そうだな。
 そう思いかけた、次の瞬間――。
「っ、きゃぁあああああ――っっ!!」
「一体どうした!?」
 耳をつんざく彼女の悲鳴に、心臓が凍る。
「フローラ!? なにがあった!? フローラ――っ!!」
 どんなに呼び掛けても、フローラからの答えは返らない。全身の血の気が引いていくのを感じた。
 ……一体、なにが起こった!? 必死に岩の隙間に身を乗り出して目を凝らし、耳を澄ます。しかし暗がりにあって、急に彼女の姿が浮かび上がるわけもない。さらに不幸なことに、岩の狭間で反響する俺自身の声が、耳からの情報把握も困難にしていた。
 クソッ!! 気ばかりが急くが、なんとか心を落ち着かせ、冷静に状況を分析する。
 今回の一件は全て、岩山内を走る細い隙間の中の出来事だ。フローラの状況を知るのに、ドラゴンたちの上空からの目は期待はできない。
 ならば、俺たちの手でどう打開の道を切り開くか――。