俺は、彼女が口にしたウィリアムという人物についての詳細を知り得ない。しかし、涙ながらにそれを告げた彼女の心は、痛いくらいに伝わる。彼女を抱く腕に、自ずと力が篭もった。
『ドラゴンにモテモテになれちゃう星の下に生まれた』という彼女……。
 それは、とんでもなく数奇で、そして、とてつもない奇跡の下に生まれいでたのと同義。一国の行く末すら左右する苛烈で危険なその星は、只人の身には余る。しかし、彼女の上でなら光明となれる。
「……フローラ、君はまさに選ばれるべくして選ばれた奇跡の娘だな」
 彼女の頬を伝った涙が、月明りを受けてキラキラと反射した。