二匹の姿が空の彼方に見えなくなるまで見送ると、フローラを大切に抱いて、子供部屋に向かった。ゆっくりと寝台に横たえると、夫人が彼女にしたのと同じように、額にそっと触れるだけのキスをした。
 ……眠れ良い子よ。そして健やかな眠りを幾千と繰り返したその先で、果たして君は、どんな目覚めを迎えるのか――。
 あどけないフローラの寝顔を前に、胸の奥に灯った熱が微かに疼くのを感じた。彼女の首もとまで掛け布団を引き上げると、寝台にそっと背中を向けて、子供部屋を後にした。