――…莉菜の言葉で、慌てて我に返ったように夜空を見つめる。



「そういえばなんかニュースでやってたよぉ、今日の満月…なんだっけ、あの…」

「スーパームーン…」


「それそれ!なんか、4月の満月はスーパーピンクムーンって言われるらしいんだけど、

――…どっちかって言うと…青みがかって紫っぽくなぁい?」



…そう。今日は満月の日になると、数日前からニュースでもやっていた。スーパームーンの日だと。

さっきお店の小窓から見たスーパームーンは、小窓が色味ががっていたこともあって白っぽく見えていたのだけど



「……すみれ、色…」



――…こんなにも絢爛に映える、すみれ色だったなんて。



「朱里?……っえ、泣いて……。大丈夫!?」

「っ…大丈夫。あまりにも綺麗だから、見とれてた…」



きっともう一生見られないであろう、すみれ色の月夜。

周りが麗蘭街特有の黒だからこそ、綺麗で息をのむ美しさだった。

…わたしの心はまだ死んでいなかったのだと、思わせてくれるほどに。



「莉菜」

「ん?」

「…今日は来られてよかった。本当にありがとう」

「っ!こちらこそだよ、朱里だーいすきっ!」



(…おかあさん、)



――…空を、星を、艶やかに魅了するすみれ色の月。


今日のこの月を、風を、景色を

ずっと忘れずに生きていきたいと思った。