サマラの胸に言いようのない喜びが溢れる。これは破滅フラグ回避のチャンスが与えられた喜びなのか、それとも純粋に父ともっと一緒にいられる喜びなのか。おそらく、その両方だ。

「おとーさま、おとーさま。私は世界一の幸せ者です。どうもありがとうございます」

喜びに瞳を煌めかせながらサマラが言えば、ディーはフイッと視線を逸らしてボソボソと言った。

「礼を言われることじゃない。もっとここに滞在したらどうかと提案したのはカレオだ。それに妖精たちがまたお前と遊びたいと言っている。お前が自力で常世と繋がれるようになるくらいまでは、面倒を見てやってもいい」

サマラは前世で『魔法の国の恋人』のディーを攻略したときのことを思い出した。
彼はぶっきらぼうで愛想も悪く言葉も悪いが、誰より誠実で深い愛を心に持つ人物で、その片鱗が垣間見えるときがたまらなく魅力的だった。

娘という立場でなかったら、サマラは今、間違いなくディーにときめいていただろう。

「えへへ。おとーさま、大好き」

ギュウっと抱きついてきたサマラの背を、ディーの大きな手がポンポンと叩く。
娘を抱っこすることに昨日より少し慣れたその手つきがなんだか嬉しくて、サマラは肩口にうずめた顔をニッコリと破顔させた。