「芹澤様、ご無沙汰しておりました」

「いろいろと頼んでしまい、すみません」

「いえ、仕事ですのでお気になさらないでください」

「……ここではあれですから、中へどうぞ」

いろいろ頼んだのに、玄関先で必要なものを受け取り、そのまま帰ってもらうのは申し訳ない気がして、お茶でも淹れようと春日井さんを中へと促した。

「いえ。私はここで失礼致します」

「そうですか。なんだかすみません。それでは書類をいただけますか? 記入次第、会社の方に送りますので」

「……」

「春日井さん?」

なにかを考え込んだ様子の春日井の姿が目に映る。手には書類が入った封筒を持っているが、それを手渡そうという素振りを見せることはない。

不思議に思い、春日井さんを真っ直ぐに見つめる私の耳に、

「春日井、ここまで連れて来てくれてありがとう。あとは蜜葉とふたりで、話したい。だからもう下がっていい」

聞き覚えがある声が届いた。