グイッと腕を引かれたと思えば、妖艶な瞳が私を捉えて放さなくて、そしてそのままふたつの影がそっと重なった。副社長の腕の中で、唇に感じる柔らかな感触に頭が真っ白になり、胸のドキドキが加速していく。


まさかの不意打ちのキス。干物女の私には刺激が強すぎて、完全に骨抜き状態だ。魔法にかけられたシンデレラのように甘い世界に堕ちていく。

「住む世界が違うとか釣り合わないとかそんなこと誰が決めたんだ? 俺はそうは思わない」

しばらくして、唇を解放した副社長が私の目をまっすぐに見てそんなことを言った。強引に、そして情熱的に迫られれば、私の中の拒絶の壁は砂時計のサラサラな砂のように崩れていく。

「君を俺だけのものにしたい。だから俺のそばにいてくれないか?」

頬を赤らめながら静かにコクンとうなずくと、再び優しいキスが降ってきた七夕の夜。戸惑いと、ときめきと興奮と様々な感情が入り混じる中、現実主義者の私の恋が静かに、そっと動き出したんだ。