茜が言うように、私は現実主義者だ。仕事も安定を求めて出世や転職は望まない。一攫千金を求めるギャンブルはしない。勿論、恋愛だって身の丈に合った人を選ぶ。

【お金と仕事は、私を裏切らない】ずっとそう言い聞かせて生きてきた。

それなりに仕事を頑張って、美味しい物を食べて、時に趣味に没頭して、そんな小さな幸せがあれば生きていける、それが私。芹澤 蜜葉(せりさわ みつは)、二十六歳。

そんな私の周りを見渡せば、ただ今、第一次結婚ラッシュといったところだろうか。去年から今年にかけてかなりの頻度で友人の結婚式に参列している気がする。

純白のウェディングドレスを身に纏い、生涯を共にする旦那様を幸せそうに見つめる友人の姿を見ていると、羨ましくもある。

だけど、いつか私も幸せな結婚がしたい、そんな淡い想いは当分叶いそうにない。

なぜならば、慎重な性格が災いして、なかなか恋に踏み出せない完全な拗らせ干物女子と化しているから。

最後に彼氏が居たのは、三年も前になるだろうか。

あまりに昔過ぎて、もはや誰かに恋をするっていうその感情も、恋の仕方も分からなくなり始めた今日この頃だ。