やはり公爵家ともなれば背負うものも違う。
 貴族の中で高い位にあるのだから、見合う服装や立ち居振る舞いというものがある。
 そういったあれこれにも慣れて、立ち居振る舞いを身に付けなければならないだろう。
 今できることは服や飾りを身につけた状態で堂々と過ごす、そんなところからなのかもしれない。

 準備を終えて、玄関ホールへと向かえばそこにはリリエラ様の言った通りの格好をした美丈夫っぷりを最大限に発揮したハルバート様が待っていた。
 
玄関ホールへと降り立った私を見てハルバート様はにこやかに微笑み、恭しく手を取るとそこに軽く口づけを落とす。

 「俺の婚約者はとっても美しいね。連れて歩いたら人目を引いてしまうね。変な男が寄ってこないように、しっかり離れずにいなければ」

 柔らかく微笑んでハルバート様は支度の整った私を褒めてくれた。
 公爵家の馬車に乗り込んで、今日は初めてハルバート様とお出かけです。
 そもそも辺境で育った私はあまり王都に来たこともなく、来ても歩き回る暇もなく辺境伯領に家族で戻っていたのでゆっくり見回るのは初めて。
 初めての場所と、お出かけする方は婚約者の公爵様とあって緊張はあるけれど好奇心もありは胸中はせわしない。

 「王都にあった辺境伯のタウンハウスはどうなっているか調べたら、売りに出ていたので実は買い取って今手入れをしているよ。あまり来ていなかったとはいっても君にとっても王都のタウンハウスは第二の家だろう?」

 まさか、そんなことになっていたとは知らず私はハルバート様の言葉に驚き固まってしまう。