「私に、ですか?」

 顔色を変えずに、採用担当者との距離感を崩さずに問いかける。
 まるで心当たりがないことだ。何かの間違いに決まっている。

「貴女、今度卒業する予定のアレンと親しかったわね」

「はい」

 攻略対象の一人アレンとは、メインヒーローと悪役令嬢という間柄でありながら、良好な友人関係を築けたと思っている。
 それというのも私が真面目な学生に徹していたからだろう。優しいアレンはゲームでの私に良い顔をしていなかった。けどここでの私は主人公をいじめたりはしていない。

「アレンのお父様は王宮に仕える魔法使いなのよ。自身もこの学園の卒業生であり、わたしの教え子だったこともあったわ。彼の話では、いずれアレンに自分の後継者となってほしかったそうなの」

 ゲームでもアレンは父の後を継ぎ王宮に仕えることになる。

「アレン自身もお父様に憧れ、同じ道を進むことに異論はなかったそうよ。お父様みたいになるのだと、子どもの頃から口癖のように話していたらしいわ」

 微笑ましい親子関係だ。
 それと私の苦情となんの関係が?

「それが卒業を控えたとたん、彼は教師になりたいと口にするようになった。なんでも貴女が教師を目指す姿勢に感銘を受けたそうよ。実際アレンはわたしのところへ面接にやって来たわ。アレンとお父様は現在、大喧嘩をしている最中らしいの」

 アレン何考えてるのー!?

 いやでも待ってほしい。

 それ、私のせいですか?

 とても反論したいのに、最終面接という緊張感のある空気が私を押し留めていた。準備不足を指摘されるかもしれないが、このような質疑応答の対策は練っていない。