夜会で想わぬ人物に会ったのは着いてわりとすぐだった。

 まさかここで第二王子に出会うとは……。
 
 実は、この国の後継者である王太子と第二王子に既に他国に嫁いだ第一王女は母親同士が姉妹の従兄弟である……。

 つまり小さなころからの親戚付き合いもあり、母親同士はいまだに仲良し姉妹なので互いの情報は母親を介して筒抜けなのだ。

 第二王子、ルーファスは俺を見つけると王子妃のビアンカと共にこちらへとやってきて周囲に聞こえるように話しかけてきた。

 「やぁ、シャロン公爵。久しぶりだね? おや、公爵は婚約したと聞いたけれど今夜は婚約者殿は一緒じゃないんだね?」

 わざとらしいが、これに乗ればおのずと周囲に自分が婚約したことが知れ渡るので幸いと内心で思いつつにこやかに答える。

 「これはルーファス殿下、お久しぶりでございます。えぇ、先日父の友人である前辺境伯のご令嬢、シャルロッテ嬢と婚約いたしました。今はまだ、前辺境伯夫妻が亡くなられたばかりですので……」

 そう、言葉を濁してまだ彼女が両親を亡くして日が空いていないことを告げる。

 すると、王子妃であるビアンカ様は察したようで少し表情を曇らせて言う。

 「それは大変でしたね。シャルロッテ嬢のことは王妃様もお心を痛めておられました。辺境伯ご夫妻とは懇意になさってましたから、ご令嬢のことを心配していらっしゃいます。少し落ち着いたらで良いので、王妃様にお顔を見せて差し上げてくださいませ」

 前辺境伯夫妻はやはり人柄が良かったのだろう。
王妃様にも覚えがめでたかったらしい。
 シャルロッテは、そんな両親の交友関係を把握しているだろうか?

 明日にでも話す機会があれば聞いてみようと考えていると、ルーファスが声をかけてきた。