今日もなんとか仕事を早めに終わらせて帰宅すれば、母とシャルロッテは今シーズンのための衣装を仕立てるのに忙しくしているという。
もうすぐ終わるだろうとのことで、着替えてダイニングで待つこと少し。

 少し疲れた様子のシャルロッテと生き生きとした母が顔を出した。
 夕飯をシャルロッテは少し残しつつ済ませていたので心配にはなったものの、俺には今日明日で片付けなければならない件がある。
そう、身辺整理のために夜会に赴くべく準備をする。

 そんな俺の準備を手伝う老執事は祖父の代から使えていた、優秀な執事で名はクリス。

 そんなクリスは俺のことなど赤子の頃から知っているので、この家で勝てない数少ない相手でもある。

 「坊ちゃま、しっかりと清算してきてくださいませ。お嬢様は、慣れない中で不安そうにお過ごしです。あなた様がしっかりしてお支えなさいませ。坊ちゃまの、唯一なのでしょう?」

 執事の観察眼が怖いと思うが、これが常で過ごしてきた俺にしてみればバレているのも問題ないというか……。

 いや、やはり恥ずかしいか……。

 しかし、隠すことでもあるまい。

 「あぁ、きちんとシャルロッテを迎えるために今夜の夜会にはほとんどが集まるから参加するんだ。婚約したことを話して、婚約者にメロメロな男だと認識してもらうとするさ」

 こうして、俺は女性関係を清算すべく夜会へと向かったのだった。