間一髪。

向こうから夏目くんを呼ぶ声がして、すぐに彼の身体が私から離れてくれた。

「続きはまた今度ね。郁田さん」

夏目くんは手のひらを私の頭の上に軽く乗せてから、呼ばれた先へと戻っていった。

「はぁ……なんなのよ……」

どうしてこうも夏目くんに絡まれてしまうんだ。

少し前は全然関わることなんてなかったのに。

学校に行く以外もこんなに憂鬱になるなんて。

夏目くんなんて大っ嫌いだ。

そして、嫌いな相手に、あんな風に身体が反応してしまう自分ももっと嫌い。

経験がなさすぎるせいなのか……。

とにかく、もう絶対、夏目くんの好き勝手にさせないようにしなきゃ。

……あと数週間もすれば夏休みがやってくる。

それまでの間、もう少しの辛抱だ。