その日の夜。くぅちゃんに、寝るのは10時半と伝えていたので、くぅちゃんが話しかけてくれるのは、9時半だ。

昼間起きたことをくぅちゃんに伝えたくて、うずうずしていた。まだ、9時かぁ。

30分が永遠のように感じた。

9時半。くぅちゃんが腕の中でむっくり動いて

「みずきちゃん、こんばんは。今日は、学校はどうだった?友達は出来た?」

心配そうなくぅちゃん。いつまでも友達ができない私を心配してくれているのだ。

「同じ学年じゃないんだけど、ねぇ、くぅちゃん」

「ん?」

不思議そうなくぅちゃん。

「くぅちゃん・・・私、好きな人が出来たみたい」

「ボクよりも?」

「うふふ、くぅちゃんは私の特別だよ。かけがえのない友達」

「ボクも小さくなって、見に行っていい?」

「・・・えっ?」

「妖精さんに小さくしてもらって、瑞希ちゃんのポケットの中から、そいつを見るの。変な奴だったら、許さない」

「く、くぅちゃぁん」

浩二先輩は悪い人ではないのは、分かっている。だけど、くぅちゃんだって、男の子だ。

「ぬいぐるみの妖精さぁん。来てください」

くぅちゃんが叫ぶと、キラキラした羽根の、妖精さんが現れた。

「話は、聞いていました。くぅちゃん、その先輩にさとられてはいけませんよ?そして、毎晩、6時には普通サイズに戻りますからね」

「分かっています。ポケットサイズにしてください」

「スモ~ラ、スモ~レ、スモ~ロ・・・・」

妖精さんが、杖を振って呪文を唱えると、くぅちゃんは、みるみるポケットサイズに。

「・・・くぅちゃん?」

私が声をかけても、くぅちゃんは返事をしない。

「そのサイズでは、会話は出来ないのよ」

妖精さんが申し訳なさそうに言う。

「小さなくぅちゃんを、守ってあげてね」

「はい」

妖精さんは、笑顔を残して消えて行った。