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…ハァ、ハァ!

…なんで?どうして、こうなってしまったの?


小さな少年は、魔獣や妖魔に跨った大人達に追いかけられていた。

何人で追いかけてきているのか、よく分からないが幼すぎる少年には何百、何千人にも追いかけられてる気持ちだったし、鎧を着ていたり魔法衣を着ていたり…何故、自分が武器を持った大人達に追いかけられているの分からなかった。

ただ、分かるのは、この大人達は自分達の敵である事。悪意を持って、自分達を追いかけてきているのだ。

…怖い…怖くて、自分の抱えているものを投げ出して助かりたい気持ちになる。
だが、自分の胸に必死になってしがみつき泣きじゃくる赤ん坊を見るとそんな事もできなかった。

知ってるから。

この赤ん坊は、自分がいないと何も出来ず死んでしまう弱い存在だという事を。

けど、悔しいが今の自分には何も出来ない。

ただただ、ヤツらの攻撃をかわし逃げるのがやっとで反撃する余力も何もない。

今、思う事は

なんで、こんな事に?怖い、助けて…誰か助けて!

だ。

雷雨で天候が荒れ狂っている。

必死で逃げるうちに、恐れと恐怖、困惑で混乱していた精神状態も落ち着きを取り戻してきて幼い少年の心が一つの気持ちに固まってきた。


逃げなきゃ!今は、とにかく逃げるんだ。

そして、助けを求めるんだ。

悔しいけど、今の俺にはアイツらを倒せるほどの力が無いから。

とにかく、幼い少年は逃げ必死に叫んでいた。幼すぎる少年は赤ん坊につられて大泣きしながらもとにかく必死に叫んだ。

生きる為に。


「…助けて!誰か、助けて!!うわぁぁぁーーーーーっっっ!!!!」


胸に小さな小さな命を守るように抱えながら。

しかし、小さな命はこの大雨に濡れ、弱過ぎる体は体温を奪われたのだろう。
泣く力も無く体がグッタリとしていた。少年はそれを感じとると消えゆく小さな命に恐怖でどうにかなってしまいそうだった。

それに少年ももう、疲労困ぱいで体力の限界がきてしまい豪雨でぬかるんだ地面に足を取られ地面に倒れていった。

そして、ついに…

少年は、誰かに腕をガシリと掴まれてしまった。




……………………


……………




「…ウッ、ウワァァァァーーーー!!!???」


ユサユサ!ユサユサ!


「…ょうぶ?大丈夫?」


と、呼ぶ声にハッと目が覚めた。

パチリと目を開けると、自分の目の中に愛おしいまん丸な顔が心配そうに自分を覗き込んでくるのが見えた。

嫌な汗をたくさんかいたのだろう。自分の髪や服はビッショリと汗に濡れている。


「…どうしたの?怖い夢でも見たの?」


そう聞いてくる、プクプクまん丸な少女に


「…!?も、申し訳ございません!
私の汗で布団を濡らしてしまいました。」


と、慌てて謝り慌ててシーツと布団の替えを用意しようと動いた。

すると、プクプクな手で手を掴むと


「シーツより、サクラの着替えの方が先じゃない?風邪、ひいちゃうよ?」


と、心配そうに自分を見てきた。


「滅相もありません!私の事などいいのです。早く、シーツを取り替えないとショウ様にご迷惑がかかります。」


ショウの気遣いにキュンとしつつも、アセアセとシーツと掛布を取り替え軽くシャワーを浴びて戻って来た。

そして、いつものようにショウのいる布団に入り、いつものようにショウのボンレスハムのような体をそっと抱き締めた。
いつもと変わらず、フワフワ、プニプニで気持ちがいい。


「サクラ、どんな怖い夢見たの?オバケ?」


そんな風に、ワクワクしながら聞いてくるまん丸体型の少女ショウは今日で12才となった。


何故、このタイミングであの時の事を夢に見たのか。幼い頃はよくこの夢を見てはうなされていた。

しかし、何故か分からないがショウが側にいると心が穏やかになり怖い夢も見ないのだ。

それが分かってから、サクラはずっとショウと一緒の布団で眠っている。

さっき、怖い夢を見たのはショウがトイレに行き側にいなかった為と分かった。

いつもなら、怖くて一人でトイレに行けないのでトイレの度にサクラは起こされトイレに付き合わされる。

しかし、ごく稀に平気な日もあるらしい。それが、たまたま今だったわけで。

でも、今の今まで少しばかりショウが側にいない程度の短い時間であったなら、この夢を見る事は一度もなかったのに。

…何故だろう。不吉な予感がする。


そして、サクラは習慣のようにショウの顔中に軽くキスを落としショウの眠り顔を眺めていた。


「…ショウ様…」



言いようのない不安から、サクラはショウを包み込むようにギュッと抱き締め
自分が寝付くまで何度も何度もショウの首口や肩に口を這わせ吸い付いていた。

その度に、漏れ出すショウの甘美な声に興奮を覚えながら。
サクラの朝は早い。

朝早くから波動と武術の修行を怠らない。
その為か、パッと見れば華奢に見られがちだが実はみっちりと筋肉がついていて所謂、細マッチョである。

それが終わると、ここから異様な光景が見られる。

サクラはショウをたくさんのキスと甘い声で優しく起こし
召使いよろしく、寝巻きを脱がせると全身くまなく人肌に温めてある濡れタオルで拭き汗疹のできそうな場所にベビーパウダーを塗ってあげる。
それから、下着から服、靴下まで着替えさせてあげると顔や歯まで丁寧に洗ってあげる。

挙げ句、食事まで食べさせてあげているのだ。

なので、ショウは生まれてこのかた箸やスプーンを使った事がないし着替えすら一人でできない。

ちなみに、サクラはショウの隣に座りショウと一緒に食事を取っている。これは、ショウが小さい頃、一人で食べるのが寂しいと泣き出した事から一緒に食事をするようになった。

せっせと、ショウのお世話をしながら。

まるで、サクラは大きな大きな赤ん坊の世話をしているかのように見える。
これには、屋敷の古きメイド達三人は相当なまでに呆れていた。

食事の時だって、食べる事が大好きなショウは毎回、美味しいからとおかわりを要求する。すると、サクラは


「いけません!おかわりは一杯までですよ。」


なんて、言いつつショウにおねだりされると、どうしてもダメと言えずに心いくまでおかわりを許してしまう。
しかも、動く事を嫌うショウは運動なんて一切しない。学校の体育の時間さえ休みがちだと聞く。
それじゃ、痩せ体質でもない限りブクブク太っていくのは当たり前だ。
とにかくサクラは馬鹿みたいにショウを甘やかし過ぎなのだ。

確かに、サクラはショウ専属の従者だと知っているが。それにしても、従者ってこんな事までするのかと疑問である。
古くからこの屋敷で働いているメイド達には、サクラが下僕か奴隷を自ら率先して喜んでやっているド変態にしか見えない。

それは、あくまで古くから二人を見守っている年老いたメイド三名だけであり、他の多くのメイド達の目には全然違って見えているようだが。



サクラのショウに対するその扱いがまるで大事な大事なお姫さまの様で。そして、ショウの体型はまん丸のおデブ。
そこで、若いメイド達の間でつけられた
ショウのあだ名は

“おブタ姫”


一方、サクラはというと


とても美しい容姿をしている。それも腰を抜かしかけるほどにだ。

その為、騒がれるのが嫌いなサクラは普段は大きめのマスクで顔の大部分を隠している。

サクラもこの容姿の為に幼い頃から何度も狙われ怖い思いもウンザリも嫌というほどしてきたので、ショウの前以外では滅多な事ではマスクは外さない。

そんな対照的な容姿の二人が並ぶと違和感しかない。



「…本当に信じられないわ。
サクラ様が、周りから“宝石人形”
“冷血王子”なんて呼ばれてるなんて…」


二人の食事風景を見ながら、一人のメイドが呟くと


「確かに、おブタ…お嬢様と一緒にいる姿を見ていたら信じられない話よね。
お嬢様から離れた姿は、二重人格かと思うほど、とても同一人物とは思えない。
お嬢様から離れたサクラ様は、冷徹冷淡で
高貴なオーラも出ていて近寄りがたいの。
…まあ、そこも素敵だけど…」


と、隣にいたメイドはホゥゥと、その姿を思い浮かべウットリとしていた。


「…はあ。お嬢様が羨ましいわ。お金があるってだけで、サクラ様にあんな風にお世話してもらえるんだもの。」


「しかも、知ってる?サクラ様、小学部の時から今に至るまでずっと首位を守ってるそうよ。
しかも、波動や武術、武器術にも長けてて
あの世界で武力一、二位を争ってるビーストキングダムと波紋王国から勧誘をされてる程なんですって!」



•ビーストキングダム
妖魔、魔獣が他の国に比べて多く存在しランクの高い妖魔と魔獣のほとんどがこの国に住んでいる。
そこに住む人々は獣人と呼ばれ、一般市民でも身体能力が異常なくらいに高い。他の国に比べて老いるスピードがとても遅く寿命も長い。平均寿命、600年。


•波紋王国。(はもんおうこく)
みんな、幼い頃から体を鍛えて様々な武術を教え込まれる。中には、世界でも稀な特殊な力“波動”を使える者も多く存在するらしい。
老いるスピードと寿命は波動の力によって違うので個人差が大きい。


「…え!?サクラ様、まだ17才よね?
大学にもまだ上がってないっていうのにお城への勧誘って早すぎない?」


「バカねぇ。そのくらい欲しい逸材だって事よ。その逸材がねぇ……」


と、噂話をしていたメイド数名は、ショウとサクラに目を向ける。


「ショウ様、お口が汚れてます。」


ショウの口元に食べカスがついてるのを見つけたサクラは、なんでもないかの様にショウの食べカスをペロリと舌で舐めとっていた。

サクラの見目が美しいせいか、それはそれはとても官能的で見ていた者たちは思わずうっとり惚けてしまっている。そんな中、一人の新米メイドが


「…なっ!なんですか、アレは!??」


顔を真っ赤にしながら、驚きのあまり隣にいた先輩メイドに思わずヒソヒソと聞いた。少しパニックになっているらしい。


「…ああ、あなたは今日から働きだしたばっかりだから知らないのね。異様だけど、アレはいつもの事よ。」


サクラに見惚れ惚けていたメイド先輩は新米メイドに声を掛けられた事でハッと我に返りキリッと答えた。


「いつもの…事?」


新米メイドは、ドキドキしながら興味津々に話を聞く。


「サクラ様は、僅か5才の時からお嬢様の専属従者だったらしいわ。」


「ご、5才ですか!?いくら優秀だと言ってもおかしくないですか?」


驚きを隠せない新米メイド。


「それは、ここで働くみんなもそれを知る人達も誰もがそう思ってる事よ。事情は分からないけど、それが事実なの。
だから、サクラ様はお嬢様の従者なんかじゃなくて“奴隷”なんじゃないかって噂もあるくらいよ。私もそう思ってしまうわ。」


先輩メイドの奴隷と言う衝撃的な言葉に


「…え!?それって違法じゃないですか!
サクラ様が人身売買されたかもって事ですよね!?でも、まさか…」


信じられないという風な新米メイドだったが、朝食も終わりかけるとメイド達は次の準備に取り掛かる。

何をするんだろうと、食事の後片付けをしながら見ていると


「今日は全体的な把握をしてもらいたいから、片付けは他のメイド達にお願いして私達はコッチよ。」


と、先輩メイドは慌しく次の場所へと移動していた。


「これから、朝のお風呂の時間よ。
色々と準備しなきゃ!」


メイド達は、お風呂の準備に大忙しだ。

そして、準備万端にした所に噂の二人はやってきた。

お風呂担当のメイド達は何かあった時のために脱衣所の外で待機である。

噂の二人は、いつものように二人で脱衣所に入っていった。それを見て、新米メイドはギョッとしてしまった。


「…え?まさかとは思いますが…サクラ様、お風呂のお世話までなさるんですか?」


ヒソヒソと隣にいる先輩メイドに聞いてみると、やっぱりというか…


「えぇ、そのまさかよ。しかも、一緒に入ってるわ。」


「…エッッ!!?」


驚き過ぎて、思わず大きな声を出してしまった新米メイドは慌てて自分の口を塞いだ。


「…しかも、たまにやらしい声が聞こえてくるわ。夜の入浴なんて特に。…だから、多分…そういう事だと思うわ。」


と、顔を火照らせ複雑そうな顔をする先輩メイドを見て、新米メイドは愕然とした。

確かに、風呂場から二人の内容まで聞こえないものの会話らしき声が聞こえてくるが、時間が経つにつれ何やら艶めかしい甘い声も入り混じってきている気もしなくはない…いや、確実にする。


新米メイドは、何だか悲しい気持ちになってきた。

お給料がいいし週二日休み、長期休みももらえる更にボーナスまで。何より家事、洗濯が大好きな自分にとっていい職場を見つけられたと喜んでいた。

なのに、現実は屋敷の裏事情を嫌でも知ってしまう、どんなに犯罪紛いな事でもどんなに辛く悲しい事でもここで働いている以上、それを他言してはならない。
それは、この仕事を辞めても同じだ。屋敷の秘密を漏らしてはいけない。

それが、この屋敷で働く第一条件だったから。


現に、今だってあの醜いおブタ姫によって性的虐待が行われているかもしれないのだ。
それを自分達は黙って見過ごすしかない。


「…寝る時も、お嬢様とサクラ様は一緒なのよ?その時も部屋から、そのような声と音がするわ。それは、年々酷くなってきてるって聞いた事があるわ。
おそらく…お嬢様が性に目覚めて知識を深める度に、行為が深くなってきていると思う。」


と、悔しそうに肩を震わせる先輩メイド。

それを見て、新米メイドも他のメイド達も自分と同じ気持ちを抱えながら働いているんだと思った。


おそらく、サクラ様は幼い頃に人身売買で旦那様に買われたのだろう。

旦那様の姿はまだ見た事はない。
だが、噂では資産家の親の遺産で働きもせず遊郭に入り浸ってばかりの遊び人だと聞く。
奥さんについては不明だが、グータラで遊び人な亭主に愛想尽かし子どもを置き逃げたのだろうと言われている。

多分、旦那様は娘同様醜い大ブタなのだろう想像がつく。しかも、ハゲてて胸毛とか無駄毛がモジャモジャのブッサイクなキモ男に違いない。

そこで、子育てなんてしたくない旦那様は気まぐれで買ったサクラ様に、“お嬢様専属”という旦那とお嬢様の次に偉い地位を与え子育てを押し付けたと聞く。

なので、生きていく為にサクラ様は旦那様とお嬢様(ショウ)に逆らえないのだとも想像してしまう。

親に甘えたい時期だろうに遊びたい盛りだろうに幼い少年は、それすら許されずひたすらに赤ん坊の世話をしてきたのだ。

そんな中、旦那様は遊び放題で家になかなか帰って来ない。なんて最低な旦那様なのだろう。酷い…酷すぎる。

…それに…

…あぁ、サクラ様はどこまでそのお美しいお体を汚されてしまっているのか。

あのおブタ姫にどんな無理強いをされ虐げられているのか…想像するだけでおぞまいし、サクラ様の事を思うと心が痛くて仕方ない。

あの宝石のように美しいサクラ様が、あの醜いおブタ姫にいいようにされてると思うだけで腹ただしく
おブタ姫をどうにかケッチョンケチョンのグッシャグシャに懲らしめてサクラ様を救い出してあげたい気持ちになる。


「…可哀想なサクラ様…」


思わず涙を流す、新米メイドに



「…そっかぁ。サクラさま、可哀想なんだ。
で、何がどう可哀想なのか聞かせてくれるか?」


と、いつの間にか隣に立っていた男性に声を掛けられた。


「…しょえぇ!」


ビックリして変な声が出てしまった。恥ずかしい。


…ドキッ!


見れば、自分の好みではないが凛々しい顔立ちのなかなかの男前ではないか。年は、20才前後であろうか。
黒髪の刈り上げツーブロック、着崩した派手な着物も厳ついゴツゴツのアクセサリーも野性味溢れよく似合っている。着物も上質な物で高貴な身分なのだと分かる。

その男は、怠そうに欠伸をしながら新米メイドと先輩メイド二人に話の一部始終を聞いた。


「…なるほど。人身売買に性的虐待な。
どれ、今サクラさまがどんな無理強いを虐げられているのか見てみるか。」


そういうと男は、メイド二人が止めるのも気にせず脱衣所に入り込み
それを止めようと慌ててメイド二人も男を追う形で脱衣所に入ってしまった。

すると、扉の向こう風呂場から


「…ショウ様、もうやめましょう?お願いします…」

「……あっ…、サクラ…もっとして!…もっとしてくれなきゃイヤっ!」

「…ここ…ですか?」

「…もっと強く……んっ!いいっ!…うん…そこぉ!そこが、いいのぉ…!」

「…ショウ様…もう、これ以上は…」


なんて、二人のハアハアという息の荒さと
ヌチャリ、ヌチャヌチャ…ピチャピチャと何とも色々想像してしまう艶めかしい音が響いている。

それを聞いたメイド二人は硬直してしまった。

今にも泣き出しそうな声でやめてほしいと懇願するサクラ様の声…まさに今、この扉の向こうでは……酷い…許せない、あのおブタ姫!!!

そう、メイド二人は怒りを覚えていた。
そんな二人に、男は


「さあて、開けるのが楽しみだな。」


と、ニマニマ笑いかけながら

逞ましい腕で風呂場の扉を遠慮もなしに開けた。

すると、そこに飛び込んできた光景は


マットにうつ伏せになっているボンレスハ…もといおブタひ…ショウに、サクラがアロマオイルで全身マッサージをしている最中であった。



「…ショウ様、これ以上揉み続けると体に良くありません!もう、やめなければ…」



「…もう、ちょっとだけ!お願い!」



「…っ!!?」



サクラは、突然現れた三人を見て
咄嗟にショウの体をバスタオルで覆いショウを守るように自分の後ろに隠した。

…が、これは逆ではないかとメイド二人は思ってしまった。

いやいや!そのおブタの裸見てもキモいだけですから!

むしろ、おブタ姫なんかじゃなくて自分の裸を隠してぇ!

でも、うわぁ…
顔だけじゃなくて、体までもこんなに美しいなんて。

雪のように白い肌が、お風呂で熱を帯び赤みがかってるのが色っぽいし、鍛え上げられた綺麗な筋肉も長い手足も素敵。
腰もキュッと引き締まって細いのがまた綺麗。

何もかもが、宝石のように美しい…
あ、アレ?気のせいかなぁ。

サクラ様の大事なさくらさまがはち切れんばかりに大っきくなってて更にはギュンって大っきく反り返ってる!

…おっき…



ぶしゅぅ〜〜〜っっ!!!?


新米メイドは、サクラのあまりに美し過ぎる裸体を見て、更にはサクラの大事な部分を見てしまい興奮し過ぎて盛大に鼻血を噴射させ目を回し倒れてしまった。


「…おっき…」


…バタン!

また、先輩メイドもサクラのあまりの美しさにヘロヘロと腰を抜かし床にへたり込んでしまっていた。
ここで働いて半年、まともにサクラを直視したのはこれが初めてである。しかも裸まで見てしまった。立派な逸物も。


その二人の様子に、凛々しい顔立ちの男は
苦笑いしつつ


「年々、美しくなっていくな、お前は。最終的に女神にでもなるつもりか?」



と、サクラの体を隅々までしげしげと眺め


「だが、女神にはそんなデカい逸物は付いてないか。しかも、仕える身でありながら主人に興奮してデカくしてるんじゃな。
それを、これからどうやって治めるつもりだった?
お!さすがに、だんだん萎んできたな。」


ニマニマとイタズラっぽく笑いながら、下品な内容をサラリと言い放った。
その言葉にサクラはカッと顔を真っ赤にし、自分の胸にショウを引き寄せるとショウの耳を塞ぎ



「…黙れ、このエロクズ!
そんな事はお前に関係ない。そんな事よりも、ショウ様の耳にそんな汚らわしい言葉を聞かせるな!
そもそも、年頃の娘が入ってる風呂場に平気で開けて入ってくる事自体おかしい!
お前には、常識というものがないのか!」



サクラは男に敵意剥き出しで怒鳴りつけた。



「…いやぁ、お前に常識を言われたかねぇわ。それに、半年ぶりに帰って来てみたら、ショウのその体は何だ?
お前が年々、美しくなっていくのに対して、ショウは年々ブクブク太って大ブタになってんじゃねぇか。」


「……!!?それでも、お前はショウ様の父親か!?可愛い娘にぶ…豚など…失礼にも程がある!!
ショウ様は少しばかりぽっちゃりしているだけだ。こんなに愛らしいのに!」



「…え…?それ、マジで言ってんの?
人の好みは色々だけど、お前ってデブ専だっけ?確か、デブは自己管理できない出来損ないだから寒気が走るくらい嫌いだとか生理的に無理だとか言ってなかったっけか?」


「ショウ様は、断じてデブなどではない!」



そうハッキリ言い切ったサクラに、男とメイド二人は

いやいやいや!ショウ、(おブタ姫)は、誰もが認めるれっきとしたデブだよ!しかも、歩くのも辛そうな大デブ!!!

サクラ(様)の目は節穴か!大節穴か!!


と、心の中で叫んでいた。



「…まあ、いい。お前らには大事な話があるから早く着替えて俺の部屋まで来い。」



そう、言うと男はその場から立ち去って行った。

ちなみに、メイド二人は客人かも誰かも分からない見知らぬ男に、屋敷の噂話を軽々話した事をメイド長にコッテリと叱られ罰として1ヶ月間お給料減額させられたらしい。



「まっちゃく!今時のわきゃい(若い)もんは!
お前達がうっかり喋っちゃ相手が、ちゃまちゃま旦那しゃまだったから良かったもにょにょ…。…はあ、呆れて物も言えんわ!」


「「ふぁ〜い」」


「なんじゃ、その腑抜けた返事は!!やる気があるにょか!お前らはぁぁっっ!!!!」



当のメイド二人は、年のせいで歯のない
メイド長にこってり叱られてる間も、まだサクラの美しい姿が頭から離れずポ〜っとし心ここにあらず状態であったという。

ついでにメイド長は、何度作り変えても合わない入れ歯が痛過ぎて普段から外しているので、どうしても舌足らずになってしまうらしい。